2011・12・30
名匠
梅雨明けの酷暑の今年7月、朝5時から畑で藍を刈り取るという貴重な体験をさせていただいた染色家チェ先生の研究所を再び訪ねる。
チェ先生は9月に韓国政府から「大韓民国名匠」の称号を受けられていた。そのご褒美でヨーロッパを回ってこられたばかりのところだった。御留守でなくて幸いだった。やっぱりイタリアが良かったそうだ。
安東でもこの冬一番の寒さだそうだ。屋外におかれている草木灰をひたしてある桶にも氷が張りつめている。
自分も7月にここで見たとおりに泥藍を作ってみたんですがというと、消石灰は貝からつくられたものでないと上手くいきませんよとおっしゃる。私が近くの農協で買った消石灰の袋には石灰石からつくられたものかどうかは表示がなかった。
パクさんが持ってきて下さった焼き芋と焼き栗。甘くておいしい。この時期までどうやって栗を保存しているんですかと聞くと、キムチ冷蔵庫で保存してるんですとおっしゃる。なるほど。マグカップいっぱいの緑茶といただく。
2011・12・29
極寒の安東へ
仁川空港からは一日に一本しか出ていない安東行きのバスに乗ったのは12時10分。東ソウルバスターミナルに寄って4時半過ぎに安東に着いた。バスの窓から川が凍っているのが見える。
雲ひとつない乾燥して冷え切った青空の安東。
出迎えて下さったパクさんの車に乗り走っているとなにやら大きな袋を山積みにしたトラックが。パクさんによると袋の中身は唐辛子だとか。それにしてもこの不安定な積み方はどうだろうか。車がカーブにさしかかるたびにくずれないかと心配しながらホテルに向かう。
鉄道の安東駅の近くなので市の中心部なのだろうけれど人通りの少ないちょっとさみしいところにホテルはある。
安東で過ごした3日、毎朝通った食堂。メニューは定食とテンジャンチゲとキムチチゲの三つだけ。
テンジャンチゲを4人で注文すると大きな鍋ごと出てくる。安東は塩サバが名物。パンチャンというおかわりできる副菜に毎朝塩サバの焼いたのが出てくる。
寒いのに安東まで何しに来たのかといえば私のヌビの師のところに韓国の伝統パヌルチル、針仕事を学びに同志と来たのだ。まだ仮住まいだというユン先生の仕事場で教わった。
老眼鏡が合わないとかいろいろ言い訳をしてみたが、自分の手がかなりいいかげんで不器用であることをつくづく知らされた。
何とか作った針山。粗が目立たぬようにアングルに苦労して写真を撮る。
2011・12・13
霜
冷え込んでいる。朝は九時頃まで霜が残っている。バケツには薄氷が。散り敷いたモミジが美しい。
霜降季開講「三文塾」の案内をもらって出かけた。大学を退官された方が三田で開いている塾。今回は「般若心経に学ぶいのち」と題された神戸のお寺の老師のお話。
摩訶般若波羅蜜多心経の「摩訶」から解説して下さった。「摩訶」は大いなるとか豊かなという意味。「般若」は智恵。「波羅蜜多」は完全なという意味。「心経」は伝承された言葉のエッセンス。
般若心経のほんの一部にふれただけだったが、分かり易くお話して下さった。
「刹那無常」の刹那。刹那とはインドのことばで指を鳴らしたときに発する音の75分の1の時間をさす。それほどの時間においても変化してやまないという意味なのだそうだ。
こんなメモがある。「仏教とは自分のいのちの世界にめざめること」。
走り書きした自分の文字がみみずのようで読めない。
2011・12・3
但馬へ
城崎温泉にいく。車で行くと列車に乗ってことことと揺られて行っていたのが何時のことだったかと思うぐらい早い。
山の黄葉も遅れていて、三田西からのった舞鶴道は山の中を走るとため息が出るほど美しい。
雨の出石で蕎麦をいただく。円山川のそばだからか、畑の皇帝ダリアも霜にやられていない。もみじもまだ見ごろ。
志賀直哉「城崎にて」。高校の教科書に載っていたのを思い出したが内容は忘れてしまっている。なぜかイモリが出てくる場面は覚えている。書かれたのは大正期で、この小説によって城崎が全国に知られるようになったと宿のしおりにある。
中心から少し奥まったところの宿はそのぶん山をとりこんだ広い庭がある。「森の教会」なんてのもあったり。
街の店には蟹があふれている。
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