本の挿絵 of gurim

地の底にいななく

作・富永敏治 
絵・中谷省三

知の底にいななく

明治末期の炭鉱を舞台に、少年吉郎と馬と、そこに生きる人たちの物語。

    部落解放文学賞児童文学部門入選作         解放出版社


日本の石炭は、遠く藩制のころから九州や北海道で採掘がはじめられ、長い間わが国の産業と、その発展をささえてきました。
一時は「黒いダイヤ」とよばれ大切にされた国産の石炭は、一九六〇年代に起きたエネルギー革命により石油にとってかわられます。
そして炭鉱労働者の失業という苦難の中で姿をけしていきました。
本作品を書く前後、私は、なんかいか、物語の主な舞台になっている、福岡県三池炭鉱・宮の原坑の、いまも高くそそり立つヤグラの下に立ちました。もちろん、廃坑となった現在、そこに働く人影はありません。
私は、この坑口に立つたびに、深い坑底の暗やみのおくから、ふるえるようにのぼってくる男女の坑夫、囚徒坑夫、そしておとなといっしょに働いていた幼いこどもたちの、血と汗にまみれた、うめきと、深いためいきを心の底に感じます。                    あとがきより

吉郎 Ⅰ (表紙絵)

 1996年
 755㎜×537㎜

吉郎

表紙のためにつくった二枚のうちの一枚。もう一枚の方は帯をつけたときに馬の顔がかくれてしまうためつくりなおしたもの。



坑内で使う道具 

 1996年
 370㎜×535㎜

道具

挿絵のために取材に行った田川、直方、鞍手の石炭資料館に展示されていた道具類を、見開きに描きました。


坑内馬

 1996年
 298㎜×535㎜

坑内馬

炭鉱の地の底で馬も働いていました。サラブレットのような馬ではなく、太くて短い脚の小型の馬でした。


囚徒と吉郎

 1996年
 403㎜×718㎜

囚徒

囚徒坑夫となった父に会いたくて吉郎は一人一人の囚徒の網笠をめくり、その中の顔をつぎつぎにのぞきこんだ。



馬小屋で働く吉郎

 1996年
 535㎜×375㎜

馬小屋

馬の小便をたっぷりすいこんだしきワラはずっしりと重かった。ゆさ、ゆさ、ゆさと、二つのかごは右に左に大きくゆれた。


吉郎とクメ

 1996年
 298㎜×535㎜

くめ

一月の寒風は音をたててふいていたが、吉郎とクメは、おたがいの肩をよせあいながら、一晩中ガラガラと、この町一面にひびく大きな音をたててまわっているまきあげやぐらの下に、すいこまれるようにはいっていった。


吉郎Ⅱ

 1996年
 745㎜×540㎜

吉郎

表紙のために制作したもの。裏表紙に使用。


望郷

李 明淑 著

望郷

李 明淑の『オモニ』に次ぐ詩集。           天理時報社



母が逝って早くも二十八年の歳月が過ぎた。母の生きた年齢を超えたいま、夜半に目が覚めて眠れぬとき、母の記憶がにじむように浮かんでくる。
いよいよ働けなくなった晩年、時折遠い日の故郷での出来事を、記憶をたどりながら少女のように懐かしげに話してくれたことがあった。そして独り言のように口ずさむ母の身勢打鈴の哀しい調べに私は泣いた。母は私たちを前にして故郷の記憶をたどることが、唯一の慰めだったにちがいない。母のその胸に秘めた思いを僅かなりとも文字にしたいというのが、私が詩を書く動機であった。 あとがきより   


リヤカア

 2004年
 187㎜×537㎜

リヤカア


        他人があるく一歩の道を
        あなたは百歩かかってあるいていった。
        灼けつく陽ざしが
        したたりおちる汗を吸い上げていく
        それでもたちどまることを知らない
        かあさんのリアカアが
        あるいていく

        つまずき のめり あるいた
        この土よ
        いちにちいちまいではなく
        いちにちにまいのはやさで
        いのちがあなたの中から
        虚空たかく消えていくのを
        みつめていたかあさんの目
        あなたが引きずりあるいたリアカアの
        車輪のあとにぬりこめられた
        かあさんの目よ
        わたしはかあさんの目からおちたしずくが
        あたたかい靄となってたちこめるみちを
        濡れてあるいてみよう

        かあさんの土と血と
        血と土のたちきれないつながりにむせながら
        もつれた糸の痛みをふりほどいてみるために      

                          「リアカア」部分




ごん狐

ごん狐

エスペラント訳・新美南吉作品集     名古屋エスペラントセンター

名古屋エスペラントセンターの行事の記念品として制作されたもの。「ごん狐」のほかに「手袋を買いに」「牛をつないだ椿の木」「空気ポンプ」。


彼岸花とごん狐

 2003年
 537㎜×195㎜

dc040506(修整1).JPG


羊歯とごん狐

 2003年
 535㎜×190㎜

羊歯


萩とごん狐

 2003年
 537㎜×187㎜

萩


栗の実とごん狐

 2003年
 530㎜×180㎜

栗

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