地の底にいななく
作・富永敏治
絵・中谷省三
明治末期の炭鉱を舞台に、少年吉郎と馬と、そこに生きる人たちの物語。
部落解放文学賞児童文学部門入選作 解放出版社
日本の石炭は、遠く藩制のころから九州や北海道で採掘がはじめられ、長い間わが国の産業と、その発展をささえてきました。
一時は「黒いダイヤ」とよばれ大切にされた国産の石炭は、一九六〇年代に起きたエネルギー革命により石油にとってかわられます。
そして炭鉱労働者の失業という苦難の中で姿をけしていきました。
本作品を書く前後、私は、なんかいか、物語の主な舞台になっている、福岡県三池炭鉱・宮の原坑の、いまも高くそそり立つヤグラの下に立ちました。もちろん、廃坑となった現在、そこに働く人影はありません。
私は、この坑口に立つたびに、深い坑底の暗やみのおくから、ふるえるようにのぼってくる男女の坑夫、囚徒坑夫、そしておとなといっしょに働いていた幼いこどもたちの、血と汗にまみれた、うめきと、深いためいきを心の底に感じます。 あとがきより
リヤカア
2004年
187㎜×537㎜
他人があるく一歩の道を
あなたは百歩かかってあるいていった。
灼けつく陽ざしが
したたりおちる汗を吸い上げていく
それでもたちどまることを知らない
かあさんのリアカアが
あるいていく
つまずき のめり あるいた
この土よ
いちにちいちまいではなく
いちにちにまいのはやさで
いのちがあなたの中から
虚空たかく消えていくのを
みつめていたかあさんの目
あなたが引きずりあるいたリアカアの
車輪のあとにぬりこめられた
かあさんの目よ
わたしはかあさんの目からおちたしずくが
あたたかい靄となってたちこめるみちを
濡れてあるいてみよう
かあさんの土と血と
血と土のたちきれないつながりにむせながら
もつれた糸の痛みをふりほどいてみるために
「リアカア」部分
ごん狐
エスペラント訳・新美南吉作品集 名古屋エスペラントセンター
名古屋エスペラントセンターの行事の記念品として制作されたもの。「ごん狐」のほかに「手袋を買いに」「牛をつないだ椿の木」「空気ポンプ」。